ピルの処方に必要な検査・関連する検診まとめ

ピルの処方を受けるには検査が多い?

婦人科や産婦人科でピル(低用量ピル・OC)が処方されるまでには、どんな検査が何種類くらいあるのでしょうか?

当サイトでは、全国の婦人科や産婦人科の低用量ピル、アフターピルの処方状況。また、各クリニックがホームページ上で公開している取り扱うピルの種類や、処方にかかる費用などのデータを独自に収集しています。

これら現場のデータと、日本産科婦人科学会が発行する低用量ピルに関するガイドラインを参考にしながら、ピルの処方に必要な検査や検診の現状を紹介します。

ピルが処方されるまでの一般的な流れ

初めてピルの処方を受ける場合の、一般的な流れを確認しておきましょう。

  1. 婦人科を決める
  2. 通院前の持ち物チェック
  3. 電話で事前予約、当日に直接受付をする
  4. 問診票に記入する
  5. 医師の問診を受ける
  6. 必要な検査を受ける
  7. ピル処方・飲み方・注意点など服薬指導を受ける
  8. 院内処方なら受付で、院外処方なら調剤薬局でピルを受け取る

婦人科やクリニックによって多少の違いはあるにせよ、ピルが処方されるまでの流れは上記のとおりです。このなかでも実際にクリニックに行って診察を受けてみなければ分からない、問診や検査について詳しく解説していきます。

ピル処方時の検査は病院によってバラバラ?

当サイトでもたくさんの婦人科や産婦人科を紹介していますが、クリニックのホームページを見比べてみると、検査内容がそれぞれ異なることが分かります。

処方までの必要な検査として、血液検査や子宮がん検査、内診や尿検査など、様々な検査や診察内容が記載されています。逆に「問診のみで処方可能」と記載するクリニックもあったりと、検査の種類は千差万別というのが実情です。検査項目が統一されない理由は2つあります。

ピル認可当初の過剰な検査項目

1つ目の理由は、低用量ピルの処方が認可された頃の初期ガイドラインが、現在のピルを取り巻く状況と合わなくなってきているためです。当時はピルの認可に対する反対意見も多かったため、反対派に対する配慮として検査項目が増えたという事情がありました。

ピルの処方はクリニックが検査項目を決定する自由診療

2つ目の理由は、避妊を目的とした低用量ピルの処方には、健康保険が適用されないためです。すべての費用は自由診療として扱われるため、ピル自体の薬代はもちろん、検査代(検査の種類)もクリニックが独自に設定します。

事前確認と診断結果を持参しよう!

薬代や検査代、検査の種類を確認する一番手っ取り早い方法は、クリニックへの事前の電話確認です。初めてピルの処方を受けるのか、リピーターなのか。必須検査の種類や追加検査の有無などを問い合わせてみると良いでしょう。

また健康診断や定期検診、婦人科検診や他院で受けた診断の結果など、自身の健康状態が確認できる情報を持っている場合は、なるべく持参するようにしましょう。すでに受診結果がある検査内容に関しては、新たな検査を省くことができます。

ピルの処方前に必ず受ける検査は?

ピルの処方を希望する女性が必ず受ける検査とされているものは、問診血圧測定身体測定の3つです。

日本産科婦人科学会が編集した、低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(2005年12月)によれば、初回処方時に必ず行う検査が3種類(問診、血圧測定、体重測定)。希望があれば行う検査が4種類(血液凝固検査、子宮頸部細胞診、性感染症検査、乳房検診)です。

血液検査や内診、乳房検査やSTD(性感染症)検査などは、ピル処方の際に必ず受けなければならない検査ではありません。

問診、血圧測定、身体測定以外の検査は、あくまで希望があれば受けられる検査です。また問診でわかった喫煙歴や妊娠、血圧測定と身体測定でわかった肥満度や健康状態から、医師が必要に応じて実施するものとしています。

ピルの処方に必要な検査と、女性の体の健康に必要な検査や検診は異なります。あまりに多すぎる検査は、ピル利用の妨げになったり、処方までの費用負担が増えるといった問題も生じます。

  • 問診
    問診では、低用量ピルの服用に対して危険性がないか、一般的な飲み方や飲む量で問題はないかを確認します。また、ピルを飲んではいけない病気にかかっていないか、病状の程度は問題はないかなどを確認します。問診で確認する内容は年齢や喫煙歴、家族歴、妊娠や授乳の有無、健康状態など様々な項目があります。
  • 血圧測定
    血圧測定では、高血圧の有無を調べます。ごくまれに低用量ピルに含まれるホルモンに体が反応し、血圧が上がってしまう体質の女性がいます。そのなかでも高血圧と診断される割合は、全体の1%程度と少数です。過剰な心配は必要ありませんが、高血圧は様々な循環器系疾患の引き金になる可能性があります。
    血圧測定はWHO(世界保健機関)の文書でも、処方前に必ず実施すべき検診と指定されるほど重要な検査です。
  • 身体測定
    身体測定では、身長と体重を測定します。身長と体重を測定することで、標準体重やBMIによる肥満度を調べます。また、体脂肪率から肥満の程度を調べることもあります。肥満は静脈や動脈などの血栓症のリスクを高めます。ピル服用前には血圧も必ず測定するように、心血管系の障害に対しては、特に入念な検査が行われます。

ピルの処方時の任意検査は?

低用量ピル処方ガイドラインに記載された、ピルの利用者から希望があった場合に実施する検査、問診や血圧測定、身体検査の結果から医師が実施をすすめることがある検査項目です。

ピルが認可された当初の1999年には必須だった検査項目も、現在では多くが任意検査に変わりつつあります。しかしこれはあくまで日本産婦人科学会のガイドラインで推奨されている内容なので、クリニックによっては引き続き処方前の必須検査としているところもあります。年に数回の定期検診として実施をすすめるクリニックもあります。

  • 内診
    膣や子宮頸部、卵巣の状態を診ます。子宮(子宮頸部)、卵管、卵巣などの状態を、医師が実際に手や指で触って診断します。婦人科で受けられる診察や検査のなかでも、特に苦手だという方が多い診察です。
  • 血液検査(採血)
    主に血栓症に対するリスクを把握するために行います。通常は血液生化学検査、血液学的検査のみ行います。検査の結果、血栓症が疑われた場合には、さらに詳しい血液凝固系検査を行います。
  • 尿検査(検尿)
    尿に含まれる成分から糖尿病の有無、肝臓や腎臓の健康状態をチェックします。尿検査で分かるリスクは問診などでも把握できるため、近年では必須検査から除外するクリニックも増えています。